makicoo thinks

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「貧困」について色々調べてみたのマキ

前回の記事でも書いたように貧困JK問題を契機に「日本の「相対的」貧困率が高い」という事実に仰天し、ちょっと色々調べてみた。疑問に思ったきっかけは、OECDの調査で、日本の相対的貧困率がフランスより高いということ。

■2015年度のOECDの調査結果

https://www.oecd.org/japan/OECD2015-In-It-Together-Highlights-Japan.pdf

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フランスのパリには今年の5月に行ってきたばかり。貧困者が比較的多いクリニャンクール地区に泊まっていたのもあるけど、どう考えても日本と比べて貧富の差が大きいイメージ。そこで「本当に日本は他国と比較して相対的貧困率が高いのか」という視点で、色々調べてみた。仮説(そうでもない)ありきなので、データの収集サンプルは歪んでいるだろうし、私自身経済にそこまで詳しくないので、比較の仕方がおかしいところはあると思う。そこを頭に入れて読んでほしい。

「他の国と比較して高い」かは謎だが、日本の貧困率はあがっている

日本で出している「貧困率」にはそもそもソースが2種類あり、OECDが採用しているのは高い方らしい。

内閣府総務省厚生労働省による「相対的貧困率等に関する調査分析結果について」平成27年12月18日

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/soshiki/toukei/dl/tp151218-01_1.pdf

相対的貧困率は、総務省「全国消費実態調査」(2009 年)では 10.1%、厚生労働省「国民 生活基礎調査」(2012 年)では 16.1%。 

また、アメリカの相対貧困率が突出しているけれど、この調査は「所得」を対象としている。そのためアメリカの福祉政策としてとられているフードスタンプ低所得者向けの食料無料券のようなものらしい)などの現物支給分は所得として含まれていない。同じように、国によって、医療費や教育費が貧困層は無料/貧困層は一部免除/貧困層も支払い要とバラバラだ。更に不労所得(株の収入や不動産の収入)や貯蓄の所得への反映基準が、どうも国によって違うらしい。

  • 日本で出している貧困率のデータが、そもそも調査によってばらつきがある
  • 所得には現れない各国の福祉政策がある
  • 所得の考え方が国によって違う

以上の事から、「本当に日本がOECD加盟国と比較して、相対的貧困率が高いのか」に関しては結局疑問が残ったままとなった。一点言えるのは上記の「全国消費実態調査」でも「国民生活基礎調査」でも、相対的貧困率は上昇傾向ではある。他国との比較はさておき「日本の相対的貧困率は上昇している」のは正しい。

日本の相対的貧困率が上昇している主な原因は高齢者の相対的貧困率の上昇

これが一番調べてビックリしたのだが、日本の貧困率が上昇している理由は、高齢者の増加によるものらしい。根拠は以下。

■2015年度のOECDの調査結果

https://www.oecd.org/japan/OECD2015-In-It-Together-Highlights-Japan.pdf

相対的貧困率(所得が国民の「中央値」の半分に満たない人の割合)は、日本では人口の約 16%である* (これは OECD 平均の 11%を上回るもの)。相対的貧困率は、世代間では、高齢者が最も高く、66 歳以上の 約 19%に影響をもたらしている。

内閣府総務省厚生労働省による「相対的貧困率等に関する調査分析結果について」平成27年12月18日

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/soshiki/toukei/dl/tp151218-01_1.pdf

相対的貧困率の上昇要因(約 10 年間の変化、参考2)
○世帯主年齢別にみると、65 歳以上は全体の相対的貧困率の押し上げに寄与する一方、30 歳未満は全体の相対的貧困率の押し下げに寄与。

母子家庭が増えてるからだ非正規が増えてるからだという要因も多少あるかも知れないが、数字に顕著に影響を与えているのは高齢者らしい。「教育格差」と「貧困率の上昇」が結びつけられて報道されがちだけれど、少なくとも直近の貧困率が上昇している原因は、高齢者の所得と関連しているようだ。

■母子家庭は確かに貧困の傾向が強いが、生活保護を受ければ「相対的貧困率」の対象には入らない

下記の統計調査によると、母子家庭は確かに所得が低い。

厚生労働省 平成25年国民生活基礎調査の概況(各種世帯の所得等の状況)

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/dl/03.pdf

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但し、母子家庭に対する日本の生活保護支給額は相対的貧困率の対象からは外れているようだ。(平成12年度の基準値:可処分所得が125万円以下を基準とした場合)

camatome.com

上記サイトの情報をもとに、母親が40歳、子供が16歳の想定で実際に計算してみた。東京都の場合、概算で月額223,430円となる。

*1

年額だと2,681,160円だ。(なおその他医療費が無料だったり、やむをえない急な出費は補助が出たりするので、実際はもっと水準が高い)

 では、何故「子供の貧困」が問題になるのか。参考にしている統計データがなぞだったが、この記事によると、日本は生活保護の受給率が著しく低いらしい。

news.mynavi.jp

日本の生活保護の受給者は、人口の1.7%です。この割合は、ほかの先進諸国に比べても非常に低いレベルです。ドイツでは、この割合は9.7%、フランスでは5.7%、アメリカでは食費扶助を受ける割合が15%(2014年)となっています。日本の生活保護受給率は、世界的に見ると、大変低いと言えます。この理由のひとつは、人々が困っていても、生活保護を受けることを「恥」と思ったり、周りからとめられたりして、躊躇してしまっているからです。

日本の「貧困」は貧困層が社会のセーフティネットを使うことを遠慮しているだけなのかも?

調べてみて思ったのは、確かに平成25年度の統計上のデータでの「母子家庭」は「児童のいる世帯」の所得の1/3強しかなく、高齢者世帯よりも低く、貯蓄もなく、貧困の割合の上昇やら他国との比較はさておき、「確かに他のクラスタと比較して相対的に貧困」であろうと感じた。

が、肝心のセーフティネットである日本の生活保護は、思っていたより母子家庭に手厚かった。

生活保護の受給基準が厳しかったり使うことに躊躇する風土があり、そのため他国ほど機能していない問題は確かにありそう、というのが今回調べてぼんやり思ってみたこと。じゃあどうすればよさそうか、というのはもう少し色々調べてからまとめられればいいと思う。

 

一点、アベノミクスのせいで貧困率が上昇した、格差が広がったと言っている学者や評論家は、今後信用しないようにしようと思った。。

*1:

東京都の場合、上記世帯に支給される額の内訳は

1)生活扶助基準(第1類費):食費・被服費等個人単位に係る経費

(世帯人数1人1人の年齢によって算出)

・・80,260円(15歳子供加算42,080円+40歳大人加算38,180円)

2) 生活扶助基準(第2類費):光熱費・家具什器等の世帯単位の経費

(世帯数によって算出)

・・49,740円(世帯人数2名)

3)住宅扶助

(世帯数によって算出)

・・69,800円(世帯人数2~6名)

4)母子加算

・・23,630円(子供一人あたり)