makicoo thinks

世の中に対して思うことはここに。

アリストテレス「詩学」メモ

各章メモ

第1章~3章 詩作の定義

詩作とは、「ミメーシス(再現/模倣/imitate)」である。

※文書中では「再現」だが、模倣の方が原文の意味に近い。但し模倣にせよ、再現にせよ、*1*2

色々な詩作があるがそれは以下でジャンルわけされる。

  1. in different things(in which) /異なった媒体によって再現する
    (文章/ダンス/音/リズム/文章)
  2. by imitating different things(what)/ 異なった対象を再現する
    (すぐれた人間/劣った人間/わたしたちのような人間)
  3. by imitating differently(how) /異なった方法で再現する
    (作者が叙述者となって再現/作者がすべての登場人物を、行動し現実に活動するものとして再現)

アリストテレスが思う悲劇/喜劇の違い

  • 悲劇・・・すぐれた人間の再現
  • 喜劇・・・劣った人間の再現
第4章 詩作が生まれた原因

2つの原因が詩作を生んだ。そしてそれは人間の本性に根ざしている

  1. 再現(模倣)をすることは、子供のころから人間にそなわった自然の傾向。再現を好み、再現によって最初にものを学ぶ
  2. 再現されたことを喜ぶ

例:絵画の対象を知っていれば、その再現方法に人は興味を覚え喜びを感じる。(確かに。セザンヌの静物画が面白いのは、普段見慣れたものが自分の意図しないイメージで再現されるから)対象物を知らないと、色彩とか仕上げの巧みさくらいしかみることがない。
※これは文章を書く上でとても重要なポイント。読者は再現されることを喜ぶ。

第5章~6章 悲劇とは

悲劇=一定の大きさをそなえ完結した高貴な行為の再現

  • 快い効果をあたえる言葉を使用
  • 作品の部分部分によってそれぞれの媒体を別々に用い
  • 叙述によってではなく、行為する人物たちによっておこなわれ
  • あわれみおそれを通じて
  • 感情の浄化を達成する

※アリストテレスが想定している「悲劇」は当時の「劇」が頭にあるっぽい
※「あわれみとおそれを通じて、感情の浄化を達成する」がポイント

悲劇の構成要素は6つ。特に大事なのは「筋」=出来事の組み立て

  • 筋(再現の対象) ※1番大事
  • 性格(再現の対象)※2番目に大事
  • 語法(再現の媒体)※4番目に大事
  • 思想(再現の対象)※3番目に大事
  • 視覚的装飾(再現の方法)※そんなに大事じゃない
  • 歌曲(再現の媒体)※5番目に大事

悲劇=行為と人生の再現。

※「筋」が一番重要なので、そこがしっかりしていれば性格/思想はおろそかでも悲劇が成り立つ。

悲劇が人の心をもっともよく動かす要素

  • 逆転(ペリペティア)
  • 認知(アナグノーリシス)

※エディプス王的な。ロミオとジュリエットも逆転と認知がふんだんな悲劇。

第7章~9章 筋について
  • 筋の長さは長すぎず短すぎず。はじめ・中間・終わりを守る
  • 出来事が次々と起こり、不幸から幸福へ、あるいは幸福から不幸へ移り変わることのできる長さ
  • 「悲劇」の中で起こる出来事は統一感を。一方が起これば他方も必ず起こる、起こりそうだという結びつきがあるものだけを組み立てる。
  • 出来事の部分部分は、そのひとつの部分でも置き換えられたり引き抜かれたりすると、全体が支離滅裂になるように、組み立てる。あってもなくても差異も示さないものは、全体の部分ではない。
  • すでにおこったことを語るのではなく、起こりうることを。ありそうな仕方で、あるいは必然的な仕方で起こる可能性のあることを語る

・おそれとあわれみを引き起こす出来事の再現

・さらに予期に反して、因果関係によって起こる場合、もっとも効果をあげる

 

第10章~11章 逆転と認知

悲劇は逆転と認知を伴う行為の再現。不幸になるか幸福になるかも、この出来事の結果として明らかになる

 

逆転・・これまでとは反対の方向へ転じる

※エディプス王・・エディプスを喜ばせようとして言ったことが、エディプスにとっては真逆の効果となった/ロミオとジュリエット・・いいなと思った人が敵対する組織の人だった
認知・・幸福か不幸かがはっきりしていた人々が、愛するか憎むかするようになる転換

※エディプス王、ロミジュリのように「逆転」と同時に「認知」がおきることも。

第3の要素として「苦難」もある。
※死、はげしい苦痛など

第12章 (悲「劇」の構成要素の話なので割愛)
第13章 筋を組み立てる上での理想
  • 筋は単一的なものではなく、複合的なものでなければならない。
  • おそれとあわれみを引き起こす出来事の再現でなければならない

NG:よい人間が幸福から不幸に転じる
※解説参照。冒頭で悲劇はすぐれた人間の再現だと最初に言っているのと矛盾してやいないか説があるが、ここで言いたいのは、何の理由もなくよい人に不幸がおこるのは、ありそうなことでも必然的なことでもないということ。不幸になるのは、おそれやあわれみがなく、観客の理解の範疇をこえるからよくないということ。

NG:悪人が不幸から幸福になる(人情に訴えるものがない。あわれみもおそれもない)

NG:悪人が幸福から不幸に転じる(同上)

あわれみ=不幸に値しないにも関わらず、不幸におちいる人に対して起こる

おそれ=私達に似た人が不幸になる時に起こる

 

GOOD:卑劣さや邪悪さのゆえに不幸になるのではなく、なんらかのあやまちの上に不幸になる

GOOD:大きな名声と幸福を享受している

第14章「おそれ」と「あわれみ」の効果の出し方

「あわれみ」が生まれるパターンは互いに親しい人たちの間

※親子、恋人、兄弟、親友

「認知」が生まれる一番よいパターンは、気付かずにおそろしい行為を行いそうになり、後から認知する
※解説参照。13章で言っていることと若干矛盾している。13章のノリだと気付かずに恐ろしい行為をして後から認知。

第15章 性格の描写
  • 性格は優れていなくてはいけない
  • 性格をふさわしいものにする(女だけど怪力とかの設定はイマイチ)
  • 性格をわたしたちに似た者にする
  • 性格を首尾一貫して再現する

→出来事の一貫性と同じように、必然的なこと、ありそうなことだけ性格にももたせる。

→欠点があっても「優れている人間」として書く

第16章 認知の種類

・印(※あざとか)

・つくられた認知(※登場人物が実はこういう事情があってと語る)

・記憶(※何かをキッカケに思い出す)

・推論(※母が死んだ場所に来たから私もここで死ぬだろう的な)

・観客の誤った推論(※Aだから大丈夫だと思ってたら実はBだった)

・出来事そのものによる認知(※偶然真実を知る)→これが一番優れている

第17章 (※矛盾・不自然なところをチェックしようという話なので割愛)
第18章 悲劇の構成

はじまり→出来事の結びあわせ→解決(解きほぐし)

悲劇の構成要素(性格・逆転・認知・苦難・視覚的装飾)をいれる

※解説参照。

出来事を織り合わせ、それを解決することのうち、解決が稚拙な人が目立つ=難しい

第19章~22章 思想、語法、文体

思想

  • 証明または反証する
  • 感情、たとえばあわれみ、おそれ、怒りなどのたぐいを引き起こすこと
  • ことがらを大きく、または小さくする

語法

  • ※ギリシャ語の話なので割愛

文体

  • 日常語=明瞭だが平板
  • 聞きなれない語(稀語、比喩、延長語)=重々しさがある
    稀語ばかり・・外国人風
    比喩ばかり・・謎になる

文体は日常語とその他の語を混ぜて使う
→平凡でも平板でもなくなり、明瞭さをもたらす

その他語の延長、縮小、変形がある

比喩表現は極めて大事

すぐれた比喩をつくることは、類似を見てとること

※佐渡島さんの話とつながる

第23章~24章 叙事詩について

劇的な筋を組み立てる=悲劇と同様

→初めと中間と終わりを備え完結したひとつの全体としての行為を中心にする

出来事の組み立ては歴史の場合と異なったものでなければならない。

※悲劇で出てきた話と一緒。必然でない筋は省く

逆転、認知、苦難が必要=悲劇と同様

文体を磨く必要があるのは、行為がなされず、人物の性格も思想もあらわされないような箇所において。それ以外の箇所は(性格や思想があらわされる箇所は)かえってそれを覆い隠す。

第25章 詩作について

詩人は以下の3つのいずれかを再現する

(1)過去にそうであったもの、あるいは現在そうであるもの

(2)人々がそうであると語ったり、考えたりしているもの

(3)そのようにあるべきもの

詩作は「信じがたいが可能なこと」よりも「ありそうだが不可能なこと」を取り扱うのがよい。

第26章 叙事詩と悲劇の違い

悲劇は叙事詩がもっているものを全てもっている

悲劇は叙事詩より短い長さでその再現の目的を果たす
→濃縮されたものの方がより多くの喜びを生み出す

悲劇は叙事詩よりあわれみとおそれを通じて、感情の浄化をよりよく達成する ※第6章

Appendix:調べた言葉

叙事詩

ホメロス「イーリアス」「オデュッセイア」など、物事、出来事を記述する形の詩の形式をとった文章。一般的には民族の英雄や神話、民族の歴史として語り伝える価値のある事件を出来事の物語として語り伝えるもの。→普通に物語と受け取りました。


ディーテュラムボスの詩作

 

古代ギリシャ宗教の神の1人である神、ディーテュランボスを讃える内容の讃歌。劇の原型のような内容。

 

アウロス笛とキタラー琴の音楽の大部分

「アウロス笛」も「キタラー琴」も、古代ギリシャの楽器。

基本的なのは歌詞つきの歌+楽器による伴奏。(純粋な器楽も存在するが音楽の本道とは見なされなかった。)→なので「音楽」といっても歌詞つきで、その歌詞には内容があるように思います。

アウロス笛

www.youtube.com


キタラー琴

www.youtube.com

アウロス笛とキタラー琴は対照的なものととらえられる

アウロス笛: ディオニュソス神(酒神)に属し、狂乱や激し情熱を連想させる。

キタラー琴: アポロン神(太陽神)に属し、調和や理性を連想させる。

 

韻律

詩のリズム。ライム。日本だと五・七・五的な。ラップ的な。

*1:プラトンがいう「イデア」に対する模倣

*2:

プラトンが言うイデア=イメージとしてはこれがわかりやすい

www.kyamaneko.com

もっと極端な例は

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp